任意後見契約 ~ パートナーとの老後を考える・お互いのお世話について
任意後見契約というものをお聞きになったことはあるでしょうか?これは簡単にいいますと、パートナーの病中(老後※)の身の回りから、お金に関する管理をするための契約ということができます。
※ 認知症・精神障害・要介護状態など、自分で物事の判断をすることが難しくなった場合を含みますということができます。
この辺りは、意外と、当然にできると思われがちなところですが、実は、相手方との関係が法律婚や親族関係でないかぎりは、上のような状況になったとき、たとえば、
・ 介護施設/入院施設の手続き
・ 各種お金の支払い(公共料金・年金など含む)
・ 不動産/動産の管理
※ 任意後見契約の特徴
など、身の回りのお世話から財産の管理まで、これらについては基本的にすることができないものとなるものなのです。
夫婦や親子であれば、当然にできるわけですが、しかし、いくら長く一緒に暮らしていたとしても、親族でなければ、任意後見契約を交わしていないかぎり、これらについて手出しができなくなってしまい、非常にやりきりない想いにかられます。
ただ逆ををいえば、任意後見契約を交わしておかれれば、誰にも口出しをされることなく、お互いに委任関係において、これらが可能になるわけですから、とても安心ができる制度ということができますね。
なお、くれぐれもご注意をしていただきたいのは、「長年一緒に住んでいるから・・、これだけの実績があれば、たとえ法律上の関係がなくとも、諸処の手続きなどはできる、させてもらえる」という筋が通用しないということです。必ず任意後見契約が必要なのです。
そんな杓子定規に・・、と思われるかもしれませんね。しかし、この仕組みは、“要介護状態・自分で物事の判断ができない方の財産を守る”という点をみているだけで、もちろん杓子定規にしたくはなくとも、それを認めてしまえば、個別の判断が多くなり、裁判所側で対応しきれないというところで、やむを得ず親族か、そうでないかという、“形”で切ってしまっているわけです。
いずれにしても、認められないのであれば、その間は何とか任意後見契約などの仕組みで対応をしてゆくことを考えましょう。
長年パートナーと信頼関係を築いてきたのに、いざお世話をしたい時には、口出しが出せず、疎遠になっていた会ったこともない親族が出てきて、パートナーに近づかせてももらえないということもあるでしょう。場合によっては、すでに身内がおらず、頼みたくとも頼めないという場合も考えられます。いずれにしても、お互い一番安心して自分の事を任せられるパートナーに、事前にお互いの事をお願いするためのものが、任意後見契約ですね。
なお、毎度同じお話しで恐縮ですが、こうした契約に対して悲観的にはならないでもらいたいのです。お互いの老後のお願いを確認しあうような事は、なかなかありませんよね。そのお願い事を互いに確認できるなんて、私はとてもハッピーだと思います。結婚をしていても、相手方が信用できず、他者と任意後見契約を結ぶこともあるくらいです。それと比べれば、なんて前向きな気持ちのよいものではないでしょうか。
任意後見契約の特徴
(1) 作成について
任意後見契約は、必ず公正証書という書類で作成をしなければなりません。
※ 公正証書は、公証役場という所で作成してもらう書面です。財産管理などの重要事項を取り決めるわけですから、お互いだけで決めて完了というわけにはゆかないのです。
注意!
後見人には、成人であれば誰でもなることができます。ただ、自己破産をした者・本人に訴訟を起こしたことのある者などについては、なることができませんのでご注意です。ちなみに、後見人は複数人設定してもOKです。ですので、パートナー他、たとえば普段から密に付き合っている友人などと共に、お互いにサポートしあうような形も一つのあり方ですね。
(2) 内容について
□ 財産の管理をどうするか
a) 不動産の管理
b) 預貯金の管理(入院費・介護費・公共料金の支払いなど)
□ 身の回りのお世話について
a) 医療・介護・福祉サービスなどの手続き
b) a)に関する契約など
注意!
お金の支払いを任されるということと、入院先、介護先などを検討して契約をするということは別物です。ですので、支払いと契約もできるというようにしておく必要があります。なお、後見人は複数人の設定も可能というのは、前述した通りですが、その場合には役割を決める事も可能ですよ。なお、記載する内容に関しては、ご相談をいただければ、お話しをすることも、原案を作成することも可能です。
(3) 任意後見契約の発動と終了
□ 任意後見契約は、本人が物事を判断できなくなった時、あらかじめ結んである任意後見契約をもって、家庭裁判所で“選任”してもらい、そこで初めて後見契約が発動することになります。
つまり、任意後見契約というのは、家庭裁判所に“選任”をしてもらうための事前用意ということになります(ですので、当然、契約は、本人の意識のある内に交わしておかなければなりません)
□ 契約の終了時期は、本人が亡くなった時となります。
介護されている方よりも先に、していた方が亡くなるようなこともあります。こうした場合を想定し、後任を決めておくことも可能です。なお、これは別のコンテンツで説明をいたしますが、本人が亡くなった後の、死亡届、葬儀の手配、年金や保険類の諸手続は、任意後見契約ですることはできません。また、遺言でもすることはできません。これをするためには、死後事務委任契約という別の契約を結ぶ必要があります。詳細は該当ページをご参考にしてください。
(4) 任意後見契約公正証書の作成方法
作成方法の詳細はこちらを参照してください。
介護時のお世話は、任意後見契約。没後の手続きは、死後事務委任契約。相続については遺言書。色々ありますし、本来であれば作る必要があるのか・・、という点を考えれば、理不尽な想いもありますよね。
ただ、これは同性愛者だから、GIDの方が戸籍変更前だから、しなければならないというものではありません。
たとえば、これら全てに私が携わることもありますが、どういった場面かお分かりになりますか?実は、いわゆる“お一人様”の状況。つまり、身内が誰もおらず、一人で老後を迎える方にも必要なものなのです。回りに誰もいなければ、介護状態になった時のことは心配です。亡くなった後の、お家の片付けから、財産をどうするかまで心配はつきません。そういった方が利用されてきました。
つまり、利用されるケースは様々だということです。ただケースは違えど間違い無く言えるのは、これらの契約は、完了すれば心から安心できる、とてもハッピーなものだということです。契約・委任という形であっても、とても大きな絆だと信じています。