GID(FTM&MTF)の方の改名の手続き
名が太郎で姿は女性、名が花子で姿は男性・・、何某かの手続き上、本人確認時に、都度説明をしなければならない状況に辟易しておられる方もいると思います。ここでは、改名の手続きについてお話しをいたします。
なお、改名と戸籍上の性別変更は違うお話しですので、後者は別途ご説明をいたしますね。
ポイント:
■名の読み方を変えるだけ、たとえば友美(ともみ)→(ともよし)にする場合には、住民票上の読み方の変更をすればよく、家裁の許可はいりません。役所の手続きで可能です。
■一方、“友美 → 友”、のように一字削除もしくは追加する場合や、“友美 → 太郎”、のように、全く別の名にする場合には、これは戸籍上の名を変更するわけですから、家庭裁判所の許可がいります。
戸籍上の名前を変更する!
上でもお話しをした通り、戸籍上の名を変更するためには、家庭裁判所の許可がいります。戸籍を変更するには、正当な事情が必要になるわけで、その“正当”という点を裁判所が判断をするということになるわけです(といっても、裁判をするわけではありませんから、その点は安心をされてください。当然、弁護士さんも必要ありませんよ)。
GIDの方に限らず、事情があって名を変えたい方はいるわけですが、しかし、簡単に名前を変えることができれば、不正な利用ができてしまう可能性もあるため、そこは家裁がチェックをするという厳格な体制になっています。では、“正当な事情”というのは何でしょうか?それは、
- 精神的苦痛を伴う場合
- 永年通称名として使用してきた場合
などがあげられます。他には、伝統芸能上の襲名や、奇名、婚姻によってパートナーと同姓同名になってしまった場合・・、など色々とありますが、GIDの方の事情としては、上の2点が該当することになります。
それでは、各手続きについてみてゆきましょう。
法律としての厳格な手続きで語りますと、若干ややこしくなりますので、実際にGIDの方がされている流れもシンプルに記載しておりますので、そちらもお読みください。※ 法律上の手続き形態は、前述の(1)に該当します。
・ 法律上の建前で読む(ちょっと難しい)!
・ 当事者の方のスタンダードな方法で読む(お薦め)!
(1)精神的苦痛を伴う場合での申請
必要書類
必要書類は、診断書のみでOKです。ただし、診断書を取得するためには、カウンセリングに通う必要があり、また診断書がでない場合の事も考え、前述の(1)の理由ではなく(2)の理由で申請をされる方も多いようです。
申請のポイント
診断書が取得できても、それだけで戸籍の変更はできません。変更を許可してもらうために、以下の2つの方法があります。
・ 診断書 と 改名したい名の使用実績(1年間)
OR
・ 精神科医2名による2通の診断書
実際には、精神科医2名による2通の診断書の提出になるのではないでしょうか。
参考:家庭裁判所サイト(戸籍上の氏名や性別の変更などに関する審判)
※ 申請書や記載例もダウンロードが可能です。
(2)永年通称名として使用してきた場合での申請
こちらの場合には、特に必要書類というのではなく、改名したい名の5年間の使用実績の証明、が必要となります。
では、どのように使用実績を証明するかといえば、公共料金や物品購入の領収書、年賀状など・・、ということになります。
しかし、戸籍上の名を変えたいと思いながら5年間も待つのは苦しい・・、GIDの診断書が受領できるまで待つのも・・という場合もあることでしょう。
そうした場合には、ホルモン治療を受けている診断書などを用意したうえ、弁護士さんや司法書士さんに相談をして改名手続きを依頼することで、数週間で変更手続きが可能な場合もあるようです(裁判所の裁量判断によるため、絶対に短期間でできるというものではありません)。
参考:家庭裁判所サイト(戸籍上の氏名や性別の変更などに関する審判)
※ 申請書や記載例もダウンロードが可能です。
(3)GID当事者の方の実際の改名手続き
必要書類
・ 精神科医による、GIDを証明する診断書
※ 診断書は、約1年間のカウンセリングで取得が可能となります。GIDの診断書自体が、2名以上の医師による診察のうえで受領できるもののため、(1)にある、精神科医2名による2通の診断書は不要です。
参考:家庭裁判所サイト(戸籍上の氏名や性別の変更などに関する審判)
※ 申請書や記載例もダウンロードが可能です。
・ 家庭裁判所へ提出する申立書類など
- 申立書
- 収入印紙:800円分を申立書に貼る
- 郵便切手:400円分(80円を5枚) ※ 90円切手を要求されることもありますので、各管轄の家裁へお電話にてお聞きになってください。
- 申立人の戸籍謄本1通
- 添付書類:申立理由を証する書面の写し
※ 家庭裁判所裁判官の判断材料は、担当官により変わる場合もあります。ご心配な方は、各管轄の家裁へお電話にてお聞きになってください。
申立てのポイント:申立書の申立実情の“8”その他に○をし、“性同一性障害”と記載し、以下の記入欄へ、
- GIDと診断された時期と医療機関名
- ホルモン療法を受けており、今後性別適合手術を希望している
- 家族、友人、職場、顧客の了解の下、フルタイムで自分の性自認の性として生活し認知されている
- 籍名を使用することによる問題点・不都合等と、それにより精神的苦痛を感じている
- 容姿と通称の不一致により支障を生じている
- 名の変更により周囲共に混乱はなく、許可を申立てます
というように記載し、実際に通称ネームで使用している郵便物や公共料金の領収書などを数通用意することで、スムーズにゆきます。