パートナーとの離婚・離縁・関係解消 ~ その時どうすればよいのか
今までは、結婚という形をどう作り、どうお互いを守ってゆくかというお話しでした。しかし、物事には表裏がありますから、結婚があれば離婚があり、中にはそういったことになる方がいることも、それは致し方ない事ともいえます。
ただ、私からのお願いとしては、ここまでお互いの事を考えて築いた関係なのですから、思い遣りの気持ちを忘れ、揉めて揉めた末に・・ということにはしていただきたくありません。
感情的になる時にこそ、もしパートナー契約(準婚姻契約書)を交わしているお二人であれば、改めて読んでいただき、思い遣りのある関係の解消を考えていただきたいと思います。
今まで何千件もの離婚事件をみてきた実務経験から申しますと、離婚時にお金のお話しが何とかできるのは、法律婚の場合には、原則相手方の承諾なくして離婚が成立しないから、つまり、お金は渡したくはないけれど、それをしなければ離婚が成立しないから、という消極的な理由からというように感じております。ですので、たとえば内縁関係であれば、法律婚と近しい権利義務があったとしても、戸籍上の問題がないために、相手方に逃げられてしまうということもままあります。
※ 財産分与は当然の権利であり、また相手方に法律上の非があれば慰謝料の請求も可能です。しかし、相手方が拒否をするかぎりは、それを取得するためには、自分で法的手段をとってゆかなければなりません。そこのハードルが高いのでしょう。
ここで何をいいたいのかと言えば、法律上の縛りのないことを良いことに、話し合いにも応じず、場合によっては姿をくらましてしまうこともあり、厳しい事をいうようですが、自分達の立場を都合よく利用するようなことはしないでいただきたいということです。実際にこうしたケースは何度も目の当たりにしています。
法律上の関係を築きたいからこそ頑張っているのですから、関係解消時にそれに逆行はしないでいただきたいと願います。だからこそ、こうした時の事も考えて、パートナー契約はお互いの事を考える、守るために必要だと改めて思います。
関係解消時に考慮すべきこと
(1) 関係解消自体について
□ 離婚をすること自体について話し合う
法律婚での離婚の場合で、一番難しいことは、離婚自体です。離婚は一方の意思だけではでず、相手方の合意ありきでしか原則成立はしませんから、ここが一番難しいものです。
ですから、10年、20年別居をしているという事すらあるわけです。そして、別居中は、収入の多い方が少ない方へ婚姻費用(別居中の生活費)を支払わなければならないという義務もあります。そこまでの厳密さは求めませんが、これくらい難しいものであるという前提で、相手方と対話をしていただきたいと思います。
(2) お金の話しについて
□パートナー契約(準婚姻契約書)を元に話し合う。なければ、法律婚上の夫婦と同じく、財産分与※の考え方に則して話し合う。
※ 財産分与:夫婦である期間中に増えた財産を分けることをいいます。なお、分与の対象になる財産は、結婚以降に増えたもの全てが原則であり、ただ例外的に、相続で得た財産・生前贈与・嫁入り道具・プレゼント類などは対象外となります。
なお、分与は、原則、時価で考えることになります。ですので、ご自宅のある場合には、(時価-ローン残高)÷2=@分与額、ともなりますし、これは全てのケースに当てはまります(必ずしも“÷2”ではありません。また、どちらか一方が結婚前からの財産を投入している場合には、計算方法は変わります)。
□ 一方に非があれば、慰謝料※について話し合う。
※ 慰謝料:原則的にいいますと、慰謝料というのは、不法行為に基づく損害賠償金、ということになりますので、つまり法律で定められている離婚原因(民法770条)を作った側に科するものということができます。
その他にも、離婚後扶養として、たとえば相手方が病気や高齢で働けないような場合の生活支援金などもありますが、これらは例外のお話しですので、詳しくはご相談をいただけますと幸いです。
(3) 任意後見契約の発動と終了
□ 必ずしも結果を書面にする必要はありませんが、ただたとえば、
- 相手方からの支払いが分割払いの場合や、たとえ一括払いであっても、支払いがしばらく先になるケース
- 話し合いは付いたけれど、後日揉めてきそうな場合(お金のこと、付きまといのことなど)
- ご自宅などの大きな財産の取り決めのあるケース
などについては、証拠として書面にされるとよいと思います。また、(1)に関しては、往々にして最後まで支払われないということも多いですので、できれば公正証書にしておかれるとよいでしょう。
離婚・関係解消については、別サイトである“離婚おきがる相談室”を参考にされてください。ここでは、お金の支払いを滞らせないためのこと(公正証書)や、言った言わないを避けるための方法(内容証明)、そして多くが悩まされているDV・モラハラについては特に詳しい記載があります。多くの知識は、いずれ知恵へと昇華します。そこから見えてくる解決策は沢山あるはずですよ。
※ 理不尽だとしても話しをしておかなければならないことがあります。公正証書については前述した通りですが、同性愛者である、または形として戸籍上そういった関係になってしまっている場合(戸籍変更前のGIDで異性愛者)については、それを銘打って書面の作成を求めれば、書類の作成ができないことがあります。
また、公正証書というのは厳格な書面ですので、場合によっては法律上書けないような内容のあることもあります。ですので、これらについても、不明な点があれば、どうぞご相談を寄せてください。