■ ガイドライン(性同一性障害に関する診断と治療)の概要
ネットや書籍など「ガイドライン」について調べてみると、複雑で、また曖昧な説明がされていますけれど、簡単に言うと、性同一性障害(GID)の方が治療をするにあたっての一つの筋道とお考え下さい。
治療の進め方として、日本精神神経学会が作成した「性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン(第3版)」があります。治療は大きく分けて「精神的治療」・「身体的治療」の2つあります。
ただし、 ガイドラインは法的に定められているものではないので、必ずしも、ガイドライン通りに沿った形で治療を進めなければならないという訳ではありません。基本的には、身体的なリスクを減らすといった意味でもガイドラインに沿って治療を行うことが望ましいとされていることだけは頭に入れておいて下さい。
【精神的治療】 第一段階 : カウンセリング
目的 : 当事者の精神的苦痛・日常生活上の困難の軽減
- 自己評価の改善
- 自己性自認やそれに基づく自己同一性の再確認
- 社会生活上の困難の想定と、その対処法の検討
- 実生活経験を通じて、それに伴う困難も体験した上での対処法の検討
- 精神症状(抑うつなど)のある場合には、その治療を優先する
- 今後の治療を希望するかを冷静に決定させる。
診断場所 | GID患者を専門としている、ジェンダークリニック科やGID患者を診断できる医師のいる精神科など |
内容 | 過去の生い立ちに関する心理テスト・血液検査・染色体の検査などを行い、医師からの質問に答えてゆくもの |
掛かる時間 | ケースによってバラつきあり。約1年間にわたり2名の医師とのカウンセリングを重ね、総合的判断により、身体的性別と精神的性自認の不一致が明らかであれば、診断書を出してもらえる |
【身体的治療 1 】第二段階 : ホルモン療法
目的 : ホルモン投与により、自己の性自認へと近づける
性自認に沿うためのホルモン投与をし、外見なども性自認に近づけ、精神的ストレスの軽減、また自己の性自認での社会生活を送りやすくする。
【FTMの場合】
■ 種類:アンドロゲン製剤を投与します。 筋肉注射(エナルモンデポー)が主となります
■ 期待される効果
- 月経の停止
- 髭や体毛が濃くなる
- 声が低くなる
- 貧血の改善
- 筋肉の増加
- 乳房萎縮
- 陰核(クリトリス)の肥大
- 性欲の亢進 など
■ 副作用及び合併症
- 肝機能障害を引き起こしやすくなる
- 著名な体重増加(血清コレステロールの上昇)
- 動脈硬化になりやすい体質になりやすくなる
- 頭髪の減少(男性ホルモン増加により、はげることもあります)
- 内臓脂肪中心になり、骨盤周辺に脂肪がつきやすくなる
- 攻撃性の増大
- 皮膚の乾燥、にきびの増加
- 色素沈着 など
■ 注意事項--年齢制限
18歳以上であることが条件ですが、18歳以上であっても未成年者は親権者などの法廷代理人の同意を得る必要があります。
※ホルモン療法を行った場合、効果、副作用は人によって様々です。必ずしも上にあることが、全ての方に起こるわけではありません。なお、診断書が無くともホルモン療法を開始することは可能です。しかし、全て自己責任となります。自分だけの身体ではありませんから、くれぐれも安易な気持ちでされることの無い様、治療を行う際には、ご家族の方医師と十分に相談の上、慎重に進めてください。
【MTFの場合】
■ 種類 : エストロゲン製剤やゲスタゲン製剤を投与します。
筋肉注射(プロギノン、ベラニンデポーなど)
経口剤(プレマリン、プロギノン、スピロラクトンなど)
貼付剤(エストラダームなど)
■ 期待される効果
- 乳房・乳腺の発達(バストの膨らみ)
- 体毛やひげの減少
- 肌のキメが細かくなる
- 脂肪のつき方が変わる(骨盤付近に脂肪がつくようになる)
- 頭髪の増加(薄毛の改善)
- 筋肉の減少
- 男性としての性機能が低下(勃起不全/ED・精子の生産が停止または、大幅に低下・ペニスの萎縮
- 性欲の低下などがあります。
■ 副作用及び合併症
- 血栓症の危険が増大
- 心不全、心筋梗塞、脳梗塞の危険が増大
- 高プロラクチン血症の発現の可能性がある
- 肝機能障害の発現の可能性がある
- 投与が多すぎる場合には乳汁の分泌、下垂体腺腫を起こすこともある
- 血色素の減少により、貧血気味になる場合もある
- 消化器症状(腹痛、悪心、嘔吐、食欲不振)などがあります。
■ 注意事項--年齢制限
18歳以上であることが条件ですが、18歳以上であっても未成年者は親権者などの法廷代理人の同意を得る必要があります。
※ホルモン療法を行った場合、効果、副作用は人によって様々です。必ずしも上にあることが、全ての方に起こるわけではありません。なお、診断書が無くともホルモン療法を開始することは可能です。しかし、全て自己責任となります。自分だけの身体ではありませんから、くれぐれも安易な気持ちでされることの無い様、治療を行う際には、ご家族の方医師と十分に相談の上、慎重に進めてください。
【身体的治療2】 第三段階 : 性別適合手術(SRS)
目的:心と身体の性の不一致を解消するため、自認の性に沿うために外性器の形を変える手術
「性転換手術」と言う言葉は耳にしたことはあるかと思います。心と身体の性の不一致を解消するために行われるもので、女性から男性の場合、男性から女性の場合とあり、それぞれ、外性器の形を変える手術のことです。
■ FTMの方の手術
Wikipedia参考
女性から男性への手術 (FTM SRS) では、5つの段階によって分けておこなわれます。
- 子宮卵巣摘出術:子宮、卵巣、卵管の摘出を行います。
- 膣粘膜切除・膣閉鎖術:膣の内壁を切除し膣を閉じます。
- 尿道延長術:膣前壁皮弁、大小陰唇、前庭部の皮膚などの組織を切り取って移植し尿道を作り、のちの陰茎形成のために延長しておきます。
- 陰茎形成術:陰茎形成には3つの方法があります。
【腹部皮弁法】
下腹部、ソケイ部などの皮弁を用いて陰茎形成する。
【陰核陰茎形成術 (Metaidoioplasty)】
長期間の男性ホルモン療法により肥大した陰核の腹側の索条物を外して、上方に翻転させてミニペニスを形成します。立位での排尿が可能となる上、身体のほかの部分に組織提供部を必要とせず傷を残さないため、この手術を希望し選択する当事者も多いです。このミニペニスに満足できない場合、すでに延長した尿道をそのまま利用して、本格的な陰茎形成もできます。
【マイクロサージャリー法】
前腕皮弁または上腕部のデルトイド皮弁を切り取り、筒状に細工して陰茎の形状にし、
マイクロサージャリー(顕微鏡下での神経血管接続手術)で陰核の部分に接続します。
切り取られた前腕部には、臀部の表皮をはぎ取り前腕部組織の回復処置を行いますが、完全に元の状態には戻らないことが多いです。性交渉を望む場合は、陰茎形成時に内部にポケット状の空間を確保し、約1年後に特殊な折り曲げ可能なインプラントを挿入して完成させます。
【陰嚢形成】
大陰唇の組織の内部にシリコンプロテーゼを挿入し陰嚢の形状に形成します。
■ 手術内容
□Step1-1 : 乳腺摘出手術
乳腺や脂肪を摘出し、平らな胸部を形成します。乳輪と乳房の色素の間にU字状に切開し、乳腺や脂肪を切除します。乳輪と乳房の色素の境目にメスを入れるので、個人差がございますが数ヶ月程度で傷跡が目立たなくなり傷跡がわからないほどになります。術後2日間はドレーンチューブを装着し、血液や体液等が胸に蓄積するのを防ぎます。1週間前後に医師の診察を受け抜糸後の帰国となります。
□step-1-2 : 子宮卵巣切除手術
子宮卵巣切除術は、下腹部の下を横に約10cm前後を切開して摘出します。術後1ヶ月程度は筋肉の痛み、また膣から切除後の不要な血液や体液等の排出が生じる場合がありますが1ヶ月程で治まります。美容外科ならではの特殊な接合法で縫合するため、傷跡は術後10日程度であまり目立たなくなり、個人差がございますが半年から1年程度で縫合痕が薄くなり目立たなくなります。術後45日程度は激しい運動は避けてください。
※ step1-1とstep1-2は同時手術可能です。
□step3-Option : 陰茎インプラント挿入及び外見の修正手術
stage-3で形成された陰茎は排尿等は違和感なく行える様になりますが、 性交する際に角度の保持が困難です。オプションとして陰茎部分に形状を保つための特殊なインプラントを挿入する事が出来ます。この特殊インプラントは性交時は上に向け挿入可能な角度にし、通常時は下に向け収納します。この素材は20万回以上の折り曲げと20年以上耐用年数を持つ素材ですので非常に耐久性に優れています。また形成した陰茎が回復するにつれ感覚が戻り、通常の男性と類似した快感を得る事も可能と言われています(個人差がございますので、100%性交可能であるということは弊社では保障できません。
また医師の判断により手術不可の場合もあるようです)。また見た目をよりリアルにする修正手術も可能です。
【SRSに関して】
SRSは、国内海外問わず治療を行うことができ、様々な方法があり、また費用も一様ではありません。そして、手術をする以上、身体的な弊害などのリスクも負担することになります。ですから、当事者ご自身、ご家族やパートナー、医師と十分に時間を掛けて相談をし、自分の状態にあった手術を見つけてください。なお、手術のお勧めや、医療的なご相談をお受けすることはできませんが、悩み、相談などにはできるかぎり乗ってゆきたく思いますので、お気軽にご相談をお寄せください。
■ MTFの方の手術
Wikipedia参考
男性から女性への手術 (MTF SRS)では、以下の2つの手法が一般的です。陰茎会陰部皮膚翻転法尿道と直腸の間を切ってスペースを作り、そこに海綿体、陰茎、精巣を除去した陰嚢の皮膚を血流を残したまま移植して膣を形成します。これを造膣と呼びます。感覚を残すためには、動脈と静脈と神経をつないだ陰茎亀頭の3分の1を移植して陰核を形成します。
感覚には個人差が大きく、また術後約1年間は、神経が未結線のために無感覚です。
性腺も温存するため若干の体液が出ますが、それはカウパー腺液であり、女性のバルトリン腺液およびスキーン腺液とは質・量が全く異なります。このことから、性交渉に必要な分泌液が十分でないことがこの手法の弱点です。また、術後3か月以上の長期間に渡って、1日2~3回程度定期的にプロテーゼ(スティック、ダイレーターとも呼ばれる)による拡張ケア(ダイレーション)を行い、膣の収縮を抑えることが必要です。
長年の女性ホルモン投与による男性器の萎縮などの理由で陰茎や陰嚢の皮膚が不足する場合に、尿道を利用して造膣することも近年では可能になりました。
【大腸法】
尿道と直腸の間を切ってスペースを作り、下腹部を15cm程度開腹して、大腸の肛門側部分であるS字結腸を10数cm切り取り、造膣をおこないます。性交渉を重視する場合に用いられる手法です。分泌される腸液がバルトリン腺液に似た効果を与えるが、つねに分泌し続けるためにナプキンなどで常時ケアをしなければならないという欠点があります。しかし、術後の膣収縮が少なく、ダイレーションが陰茎会陰部皮膚翻転法に比べて少ない回数で済むという利点もあります。現在では古典的な術法とされ、陰茎会陰部皮膚翻転法が不可能な場合にしかおこなわれません。どちらの方法でも難しいのは血行の保持であり、うまくいかない場合はその皮膚に血が通わなくなるため、その皮膚組織が壊死して脱落する可能性があります。
【SRSに関して】
SRSは、国内海外問わず治療を行うことができ、様々な方法があり、また費用も一様ではありません。そして、手術をする以上、身体的な弊害などのリスクも負担することになります。ですから、当事者ご自身、ご家族やパートナー、医師と十分に時間を掛けて相談をし、自分の状態にあった手術を見つけてください。なお、手術のお勧めや、医療的なご相談をお受けすることはできませんが、悩み、相談などにはできるかぎり乗ってゆきたく思いますので、お気軽にご相談をお寄せください。